2001.6.15.

<<学会印象記>>
第50回 
全日本鍼灸学会 in OSAKA 2001.6.8-10

学会会場の大坂国際会議場
(グランキューブ大坂)

大坂でのオリンピック開催を想定して建てられた建物だそうです。

全体の感想
 今回の大阪大会は臨床研究、特にEBMに関する演題が多かったように感じます。昨今、鍼灸など医療において治療の根拠(EBM)を求めようとする動きが盛んです。そのため鍼灸学会自体も数年前から臨床研究の重要性を強調し、価値の高い研究をするための様々な研究方法を広めていました。その成果もあってか今回は単純な臨床報告だけではなく、対照群をおいたりダブルブラインドをしてみたりと、各先生方が工夫をして高い質の研究を心がけているように感じました。まだ十分な臨床研究とは言えませんが、より高い質の研究をしていこうという姿勢は評価して良いのではないかと思います。これからもこの様な質の高い研究が増えることを期待したいと思います。 また昨年と同様、若い先生方の活躍も目立ったと思います。数年前に発表をしていた先生方に代わり、新しい世代の先生方が色々な分野の研究を始めているように思いました。また、振動誘発屈曲反射や筋硬結、臨床試験、疫学調査などは演題が数題存在し、同じ分野を切磋琢磨しながら多くの人が研究しているような印象も受けました。私事ですがトリガーポイントの研究も毎年2、3題コンスタントにあり、それらの先生方と毎年議論ができるのでとてもうれしく思います。 どの分野もこれからが本当楽しみです。(伊藤 記)


 今回の学会発表のなかで、ラットの病態痛モデルを使った研究に関する発表がいくつかあり、痛みの研究が、生理的なものから病態時のものへ変わりつつあると感じました。また、今後さまざまな病態モデルを使った研究に関する発表が増えてくるだろうと思いました。
 話は変わって、今回の学会では、同期の卒業生と久しぶりに会うことができ、臨床の現場での体験談をたくさん聞く事ができました。話のなかには、私が基礎研究をしていく上で参考になるものもいくつかあり、発表以外の話を聞くことも重要であると実感することができました。(金本 記)


 今回の大阪大会は学生の動員が多かったこともあり、参加者が3000人を超えたらしく、賑やかな学会だったように思います。人の多さ、特に実技セッションに集まった人の多さに驚きました。
 ずっとスタッフとして動いていたので発表や講演を聴くことができず残念でしたが、先輩方をはじめ、同期の友人や卒業した後輩に会え、皆それぞれの場所で頑張っていることを感じ、私自身刺激を受けました。
 また、今回初めて学会発表をしたのですが、準備段階から含めていろいろ学ぶことがありました。このことを次の機会に生かしていきたいと思います。(桑野 記)


 今回の大阪大会は新しく出来たばかりの話題の国際会議場で行われました。大阪という立地条件だったため、鍼灸関係の学生さんも多く参加され、若手の先生方のパワーと共に活気に満ちた学会という印象を受けました。
 私の出身校が主催学会という事もあり、大勢の懐かしい先生方や友人に会い、仕事や研究内容、プライベートまで実り多い学会だったと思います。
 私の発表は土曜日の午後という恵まれた時間帯であったため、多くの質問や御意見を頂きました。先生方の様々な観点からの意見で自分の実験を一歩立ち止まって見直すことができ、非常に勉強になるものでした。来年の筑波大会に向けて、多くの御意見をいただける様頑張って行こうと思います。(萩原 記)


「ここまで分かった鍼灸医学/筋肉痛、筋機能に及ぼす鍼灸の効果について」-基礎と臨床との交流-

 昨年始まったこのセミナーは、現在までの文献をもとにどこまで鍼灸の研究が進んでいるのか?もしくは、どこが研究される必要があるのか?という点に重点をおいてそれぞれの演者が総括的に解説するセミナーとなっています。今年は筋肉にそのターゲットを絞り、基礎的な研究や臨床報告をもとに「筋肉痛のメカニズムと鍼刺激との関連」「骨格筋血流に及ぼす鍼刺激の効果とその作用機序」「筋疲労、筋力、筋持久力に対する鍼灸の効果」の大きく3つに分けて解説されました。最初の演者は、我らポリモーダルクラブイチオシの稼ぎ頭 鍋田選手で遅発性筋肉痛(DOMS)や筋筋膜性疼痛(MP)、線維筋痛症(FM)のメカニズムおよび鍼刺激について紹介されました。MPやFMは聞き慣れない症候群ですが、外国のリハビリテーション分野ではよく取り上げられている疾患で、日本にも潜在的な患者は多いものと予測されます。次の演者は筑波技術短期大学の大沢先生で、昨年本学会で発表された骨格筋血流に及ぼす鍼刺激の効果とその作用機序を中心に筋肉への直接的作用についての解説がされました。(オカダ 記)

「未病をめぐる対話ー予防医学における鍼灸医学の意味論ー」-パネルデイスカッション-

 近年、医療保険制度の見直しが進められていますが、そもそもの原因のひとつに医療費の高額化が挙げられます。これは研究/技術の進歩によって重病でも治せるようになったと喜ばしい一面、その分お金がかかるようになってしまった状況でもあります。鍼灸の分野では「未だ病にならず=未病」という概念がもともとあり、これをもっと広く普及させようというねらいでパネルデスカッションが行われました。まずはじめに、未病の定義が話し合われ「未病というのは時系列的である」「正常範囲内でも疾患である」「結果的に病気に結びつく過程にある状況」「これまでは健康がマジョリテイ(大多数)で、病気はマイノリテイ(少数)だったが、現在はこれが逆転している」など大変示唆に富むデイスカッションがおこなわれました。最後に「病気にならないことは社会に対するエチケットである」というのは、自分の普段の生活を振り返るよいキーワードになるなー、とちょっとだけ反省しました。(オカダ 記)

「医療情報と鍼灸ー鍼灸分野におけるIT革命のはじまりー」

 これは私が毎年参加している「電子カルテ研究会」のワーキンググループのセッションを拡大し、今年初めてセミナーとして行ったものです。
 現在、電子カルテは病院を中心にその記載内容についてのルール作りが作成されつつあります。これは電子カルテをネットワークに繋いだときに、それぞれが勝手な記載方法をしていると相手側が読めないという事態が生じるのを防ごうという宮崎医大の有志の先生方の呼び掛けで始まった運動です。この動きに連携をとりつつ、鍼灸の分野でもこれら電子カルテの記載内容についてのルールつくりをしましょう!ということでワーキンググループが3年ほど前に立ち上がりました。ポリモーダルクラブの皆さんならよくご存じかと思いますが、それぞれが流派を名乗って治療を行う鍼灸において、このルール作りは困難を極めなかなか前に進みません。しかし、この鍼灸分野での共通ルールを作らない事には、地域医療の一員として医療ネットワークに参加していくことは不可能となってしまいます。また、この電子カルテは臨床研究を進める時に、この上もなく力を発揮できるツールとなります。EBM医療が浸透しつつある今の社会情勢に、EBMが少ない鍼灸が積極的に参加していくためにも早急なルール作りが提言されました。(オカダ 記)

電子カルテのお試し版(Windows98/Me/2000用)はこちらをご覧ください。


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