内科における鍼灸治療の役割
鍼灸治療とは
東洋(主として中国)で約2,000年前に開発された物理療法の一種です.体表はもとより身体の内部に生じた病変(苦痛,変調)を体壁に生ずる,こり(硬結),痛み(圧痛),冷え,やつれといった異常反応としてとらえ,これらの反応の分布などを通して病気の状態を認識し,体壁(皮膚,皮下組織,筋肉,靱帯など)に物理的なエネルギーを与えたり(補),奪ったり(瀉)することによって引き起こされる生体の反応力を治療に応用しています.治療手段としては,針(鍼)〔毫針,皮内針,接触針〕,灸〔直接灸,間接灸〕,灸頭針,瀉血,按摩などがあります.最近では針を刺してそれに低周波を流して刺激する方法も重用されています.機能的なレベルの疾患にその適応が多く,なかでも痛みを伴う疾患(筋骨格系の運動器疾患,頭痛など)に奏効することが多いです.不定愁訴症候群をはじめとして西洋医学が対応に苦慮する病態あるいは病気の予防(未病を治す)への応用が期待されています.
内科領域への鍼灸について
臨床鍼灸医学・教室との共同で各疾患に対する鍼灸治療の適用と有用性を検討しています.鍼灸センターにおける内科領域での外来患者は,胃潰瘍,狭心症,高血圧症,慢性閉塞性肺疾患,気管支喘息,糖尿病,アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎),帯状疱疹などの多岐にわたっています.また入院患者では,入院の理由となった基礎疾患に基づく症状,長期入院に伴う症状(長期の臥床による腰痛や不眠等),難治性疾患(潰瘍性大腸炎等)に対する鍼灸治療を行い,ターミナルケアあるいは緩和医療としての鍼灸治療も行っています.これらの成果は,全日本鍼灸学会のみならず,日本東洋医学会,癌治療学会,糖尿病学会,日本呼吸器学会,緩和医療学会などにも発表しています.