① Foxn1陽性胸腺上皮前駆細胞による胸腺形成
器官形成初期の胸腺原基では、上皮細胞のほとんどが胸腺上皮特異的な転写因子であるFoxn1を発現し、それらには前駆細胞活性を持つものが含まれることが知られている。我々は、近年、生後マウスの胸腺において、機能分子であるDll4やCCL25を発現して胸腺微小環境を構築している上皮細胞の多くがFoxn1陰性であり、一部の上皮細胞に限局してFoxn1が発現していることを示した。そこで、本研究では、生後マウスにおいて、Foxn1の発現を軸として増殖活性を有する胸腺上皮細胞の前駆細胞を同定しその特性を明らかとする。その上で、胸腺上皮前駆細胞を用い胸腺の自己再構築を試みる。さらに、胸腺上皮前駆細胞について、胸腺内分布・分化能について検討を加える。その上で、加齢、感染、放射線、抗がん剤で機能低下した胸腺上皮細胞が胸腺上皮前駆細胞の移入によって胸腺を自己再構築できる条件を検討する。これらの結果から、免疫不全となった胸腺の自己再建の確立に貢献したい。<学内研究助成:Foxn1により調節される胸腺上皮細胞の分化及び機能に重要な分子の解析>
② 胸腺皮質上皮細胞の分化と皮質領域形成の解析
胸腺皮質と髄質領域を形成する上皮細胞は共通の前駆細胞より分化する。胸腺上皮細胞の分化には胸腺細胞とのクロストークが必要であるが、その詳細は十分に明らかになっていない。現在、胸腺細胞がほとんど無いモデルマウスを用いて胸腺皮質上皮細胞の分化および領域形成に関わる胸腺細胞因子の解析を行っている。<学内研究助成:胸腺皮質上皮細胞におけるLTβRシグナルの役割>
③ 調節性T細胞を誘導する胸腺微小環境の解析
Foxp3陽性の調節性T細胞Tregは、マウスでは出生前後から主に胸腺髄質で見とめられる。調節性T細胞の分化には、TGFbetas1, IL2, 自己抗原などの関与が知られている。現在、主にTGFの刺激がどこで、どの細胞のどんな因子により誘導されるかを検討している。
④ 胸腺特異的な機能を持つ血管形成の解明
胸腺の血管はangiogenesisにより胸腺外から伸びた血管でも環境によりその特異性が獲得できるのか。それとも胎生期に誘導がかかりそのまま、血管前駆細胞として胸腺内に存在した血管からしか胸腺特異的血管形成はできないかを、腎被膜下に移植した胎児胸腺または成獣胸腺の血管が胸腺ドナーに由来するか、それとも腎組織ホスト由来かを検討することで明らかにする。
⑤ 鍼灸による免疫応答の調節
免疫系の組織・器官には交感神経と副交感神経が分布する。ストレスは、①視床下部-下垂体-副腎皮質軸を活性化しグルココルチコイドの血中への分泌を促進することにより免疫抑制を起こす。また、ストレスは②視床下部-自律神経軸を活性化し免疫系の組織・器官に働いて免疫抑制を起こす。鍼灸刺激は、痛みやストレスによる視床下部の活性化を抑制することで、ストレスによる免疫低下を抑えとされており、ストレス誘発の免疫抑制と鍼灸による改善について解明する。鍼灸刺激は、末梢のリンパ系組織・器官において神経系由来因子やサイトカインの放出を誘導することを明らかにしており、免疫系の賦活や調節との関連を解明する。
(updated:2015.1.28)