脳穿通枝動脈(cerebral perforator artery)は線条体を栄養する血管で非常に細く流速が遅い。このためTOF-3D-MRAの技術を利用する場合十分な注意が必要となる。
枝穿通のMRIによる描出方法としては、拡散MRIと同じ方法で流れている方向にグラディエントを掛けスピン位相を変えて信号強度を低下させる方法(FSBB)(1, 2)やTOF(time-of-flingt)を用いる方法がある。FSBBでは、グラディエントパルスにより血液の位相が180°ずれ、ピクセル内の血流領域が50%のときに信号が最も低下すると考えららられる。位相のキャンセルにより信号が低下するため、実際の血液領域より大きめに描出される。一方、穿通枝の流速が遅いため、TOFでは3D-MRAで血液信号が飽和してコントラストが出にくくなることが予想される。このスライス内の飽和を抑制するには測定スラブ圧を薄くする、もしくは2Dで撮像する必要がある。これらを考え合わせると、中大脳動脈(MCA)からの分岐部を10-20mmの3D-MRAで出発点を見つけ出し、2D-MRAで追跡する方法が考えられる。
3Tより高磁場の7TではT1の延長からinflow効果によるコントラストが向上し、描出が可能となるという論文が発表されている(3)。この論文では枝穿通がかなりよく描出されている。7Tを利用し、さらにz方向に短いコイルを利用することでSARを抑制し、MT(magnetization transfer)効果を生かした血管周辺組織の信号抑制効果があったと思われる。(2014.07.05)
以下にこの施設で行った2D-MRAの結果を示すのでこの後の参考にして欲しい。
3T-MRA 2D-MRAの結果 (Trio:シーメンス社:32channel head coil, 90°, TR/TE=150/5.7ms 290×320 8slices)
さらにスライス厚を1.5mm, Flip Angle 90°でTRを100msから40msの間で変えたときの画像を以下にします。TRが40ms以下ではコントラストは上昇するがSNが低下する。ただ、1.5mmでTR=40msでも流入効果が僅かに確認できる。
TR=60msで2回積算でFOV=200ms, 1.5mm 30% overlapで計測した。
論文)
1. Visualization of lenticulostriate arteries at 3T: Optimization of slice-selective off-resonance sinc pulse-prepared TOF-MRA and its comparison with flow-sensitive black-blood MRA. Okuchi S, Okada T, Fujimoto K, Fushimi Y, Kido A, Yamamoto A, Kanagaki M, Dodo T, Mehemed TM, Miyazaki M, Zhou X, Togashi K.
Acad Radio. 2014 Jun;21(6):812-6
2. Visualization of lenticulostriate arteries by flow-sensitive black-blood MR angiography on a 1.5 T MRI system: a comparative study between subjects with and without stroke.Okuchi S, Okada T, Ihara M, Gotoh K, Kido A, Fujimoto K, Yamamoto A, Kanagaki M, Tanaka S, Takahashi R, Togashi K.AJNR Am J Neuroradiol. 2013 Apr;34(4):780-4
3. Imaging and analysis of lenticulostriate arteries using 7.0-Tesla magnetic resonance angiography. Kang CK, Park CW, Han JY, Kim SH, Park CA, Kim KN, Hong SM, Kim YB, Lee KH, Cho ZH. Magn Reson Med. 2009 Jan;61(1):136-44.