筋・筋膜疼痛症候群
筋・筋膜疼痛症候群とは?
筋・筋膜疼痛症候群(MPS)は2-3個の筋肉に限局した慢性的な筋痛で、線維筋痛症と同様に血液検査やX線所見に異常がないことが特徴です。MPSの原因はトリガーポイントと考えられており、トリガーポイントの証明こそがこの症候群の診断基準にもなります。MPSに含まれると考えられる疾患は意外に多く、慢性的な肩こりや腰痛、顎関節症や緊張型頭痛などのもこの症候群に含まれると考えられます。
トリガーポイントとは?
筋・筋膜疼痛症候群(MPS)に特徴的な圧痛部位をトリガーポイントと呼び、筋肉の痛みや凝りの原因と考えられています。トリガーポイントは筋肉内の索状硬結といわれるロープ状の細い筋の塊の上に存在する圧痛部位で、その部位を強く圧迫することで筋肉ごとに典型的な関連痛が出現します。
トリガーポイントが存在する部位と痛みや凝りを感じている部位が一致しているときは比較的簡単に治療ができるのですが、筋肉によっては自分が痛いと自覚している部位とは全く関係ないような遠隔部にトリガーポイントが存在していることもあり、専門的な知識がないと治療は困難です。
原 因
打撲や運動による筋損傷など何らかの理由で筋肉が損傷し、それが慢性化したことがMPSを発生させる原因の一つと考えられています。筋痛が慢性化するためには幾つかの条件が必要ですが、我々は何らかの理由で筋損傷が起こっている筋肉の血流量が低下したことが慢性化に至る一つの原因であると考えています。
治 療
一般的にはトリガーポイントを同定した後に、トリガーポイントブロック注射を行うことで局所麻酔薬をトリガーポイント部に注入するか、ストレッチをすることでトリガーポイントが存在する筋肉を引き伸ばすような治療を行います。しかしながら、最近では局所麻酔薬を浸潤させなくても、注射針を刺入しただけ効果が見られるという報告や鍼治療で効果が見られるとする報告が多数存在しており、我々は副作用の少ない鍼によるトリガーポイント治療を提唱しています。
線維筋痛症外来について
→なお、明治鍼灸大学鍼灸センターでは線維筋痛症専門外来の中で筋・筋膜性疼痛の鍼灸治療も行っています。こころあたりのある方は一度相談してください。
専門外来名:線維筋痛症外来
治療日:火曜日
診療時間:14:00-16:00(要予約)
治療担当:伊藤 和憲
連絡先:明治国際医療大学 附属鍼灸センター 0771-72-1210まで
<筋・筋膜疼痛症候群(トリガーポイント)に関する治療報告>
・伊藤和憲, 越智秀樹, 池内隆治, 北小路博司, 北條達也, 勝見泰和:腰椎変性側弯症に対する鍼治療の試み. ―腰方形筋への鍼治療が有効であった一症例―. 明治鍼灸医学, 32: 9-14, 2003.
・伊藤和憲, 越智秀樹, 池内隆治, 北小路博司, 勝見泰和, 小嶋晃義:高齢者の慢性腰痛に対するトリガーポイント鍼治療の試み. -背部経穴への鍼治療で効果が得られなかった3症例に対する検討-. 全日本鍼灸学会誌, 53(4): 534-539, 2003.
・伊藤和憲他:顎関節症と鍼灸治療「座談会」-顎関節症を見逃さずにケアしていくには-. 医道の日本, 716:27-38, 2003.
・伊藤和憲, 越智秀樹, 北小路博司:高齢者の慢性腰痛に対するトリガーポイント鍼通電の効果. -トリガーポイントへの置鍼で効果の得られなかった症例に対する通電治療の試み-. 明治鍼灸医学. (in press)
・伊藤和憲, 北小路博司, 川喜田健司:肩こり患者のトリガーポイントから記録された自発放電活動について-.
僧帽筋にトリガーポイントが存在した1症例-. 全日本鍼灸学会誌, 54(1):97-101, 2004.
<筋・筋膜疼痛症候群(トリガーポイント)に関する研究報告>
・伊藤和憲,岡田薫,川喜田健司:伸張性収縮運動負荷によるトリガーポイントモデル作成の試み. 全日本鍼灸学会誌, 51(1) : 84-93, 2001.
・伊藤和憲,岡田薫,川喜田健司:実験的トリガーポイントから記録された電気活動に対する検討. 全日本鍼灸学会誌, 52(1): 24-31, 2002.
・伊藤和憲:ウサギの実験的トリガーポイントから限局して記録された筋電図活動. 明治鍼灸医学, 29: 69-79, 2002.
・Itoh K, Kawakita K : Effects of indomethacin in development of an exercise-induced sensitive region in fascia of the rabbit. Jpn J Physiol, 52(2): 173-180, 2002.
・伊藤和憲,岡田薫,川喜田健司:トリガーポイントに関する基礎的な研究. 鍼灸OSAKA, 16(4): 329-335, 2000.
・伊藤和憲, 川喜田健司:ウサギの伸張性収縮運動後に生じた筋膜の閾値低下部位に対するインドメタシンの影響. 季刊東洋医学, 33: 77-80 2003.
・伊藤和憲, 北小路博司:圧痛・硬結の臨床的意義. 鍼灸OSAKA, 19(4): 287-293, 2003.
・Itoh K, Okada K, Kawakita K:An experimental model of the trigger points produced by eccentric exercise in human subjects. Acupuncture Med, 22(1): 2-13, 2004.
キーワード:筋・筋膜疼痛症候群・トリガーポイント・顎関節症・慢性腰痛・慢性頚部痛・肩こり・緊張型頭痛
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