骨格筋の代謝観測
(1) 31P-MRSによる運動に伴うクレアチンリン酸の減少とpH低下の観測
(2) 31P-MRSによる運動に伴うATP合成速度の計測
(3) 1H-MRSによる筋運動にに伴うアセチル-L-カルニチン酸上昇の観測
骨格筋の代謝観測について
1980年代に、骨格筋の代謝とくに31P-MRSを利用した高エネルギーリン酸の代謝物質の観測がはChance B.らによって精力的に行われた。1990年台になり1H-MRSによる脳代謝の研究が進むにつれて1Hと周波数が異なり、一部の高周波回路やパワーアンプ、コイルなどを専用に必要とする31P-MRSを利用した研究は減少している。現在研究機器として世界で導入されている7T-MRIではそのケミカルシフトの広がりのメリットを活かして再び研究の進展が認められるようになっている。
(1) 31P-MRSによる運動に伴うクレアチンリン酸の減少とpH低下の観測
骨格筋はクレアチンリン酸をはじめ、ATP、ADP、無機リン酸などの高エネルギー代謝物質を高濃度で含むため、31P-MRSを計測するとこれらのリン酸の信号が観測される。クレアチンリン酸のATPに対する比は脳などに比較して高値をしめし、高いピークが認められる。ATPは分子構造としてアデノシンに着く3つのリン酸が根元からα位、β位、ガンマー位との3つのリン酸が、それぞれクレアチンリン酸の近傍からガンマー位、アルファー位、ベータ位の順番でMRS上で観測される。
(2) 31P-MRSによる運動に伴うATP合成速度の計測
ATPのガンマー位のリン酸は無機リン酸と交換しており、飽和移動法を用いてその反応速度が計測されている。運動により反応速度の上昇が観測される。
(3) 1H-MRSによる筋運動にに伴うアセチル-L-カルニチン酸上昇の観測
骨格筋における脂肪代謝は成人病などの予防・改善などで着目されている。脂肪は細胞に取り込まれ、分解され、ミトコンドリアで燃焼(酸化反応)する。この課程で脂肪はベータ酸化によりアシル化からアセチル化する。脂肪酸は、カルニチンと結合してアセチルカルニチンとして、ミトコンドリアの膜を通過することが分かっている。さて1H-MRSを利用すると、運動後にアセチル-L-カルニチンのピークが観測されることが分かっている。3T-MRIで、角度6°の傾斜を6km/hで60分間歩行するとアセチル-L-カルニチンが確認できた。