対応のある2群のノンパラメトリック検定:表計算ソフトで行うWilcoxonの検定
Wilcoxonの検定は対応ある2群のノンパラメトリック検定の一つです。次のようなデータの検定に利用します。
・対応のある2群
・アンケートやVASで計測したデータの順位は正しいという仮定を利用し計算します。
・間隔尺度や比率尺度でもデータが正規分布でない場合に用いられます。
*対応のない場合はMann-Whitney検定を利用します。
対応のある検定なので最初の状態からどのようにデータが変化したかを調べます。次のステップで計算できます。
1) 変化の差を計算し、さらに差の絶対値を計算します。
2) 変化が正なデータと負のデータを色分けし、並べ替えします。
3) 仮の順位を付けます。ただし、変化のないデータ(差がゼロ)には順位を付けません。
4) 同じ変化量のデータの順位は順位の平均値を採用します。
5) 正負のデータから順位の和を計算し小さい方の和が統計量Tとなり、Wilcoxonの検定表から基準となるp値に対応する値を読み取りと求めた順位和(統計量T)と比較します。(Wilcoxonの検定表はたとえばAoki氏のページの表などを利用してください)
データを例に解説します。
例題 肩こりの患者10名にVASで痛みに関するアンケート調査を行い、治療Aの前後で比較した。治療Aは肩こりの痛みを改善するといえるか5%有意水準で検定しなさい。
被験者 | 治療前 | 治療後 |
No.1 | 9.2 | 7.5 |
No.2 | 8.2 | 8.6 |
No.3 | 5.3 | 6.1 |
No.4 | 7.6 | 5.6 |
No.5 | 7.2 | 6.4 |
No.6 | 4.9 | 4.2 |
No.7 | 8.2 | 7.2 |
No.8 | 8.9 | 7.6 |
No.9 | 7.2 | 7.2 |
No.10 | 7.8 | 6.2 |
ステップ (1) 変化の差を計算し、さらに差の絶対値を計算します。
ステップ(2) 変化が正なデータと負のデータを色分けし、並べ替えします。
ステップ(3) 仮の順位を付けます。ただし、変化のないデータ(差がゼロ)には順位を付けません。
ステップ(4) 同じ変化量のデータの順位は順位の平均値を採用します。
ステップ(5) 正負のデータから順位の和を計算し小さい方の和が統計量Tとなり、Wilcoxonの検定表から基準となるp値に対応する値を読み取りと求めた順位和(統計量T)と比較します。
この例題ではNo.2とNo.3の被検者の順位の和4.5(=1+3.5)が統計量Tになります。
上のデータでは順位が計算できた対の数(被検者数)が9
下の有意水準5%(P=0.05)の値は5となります。
従って、4.5(統計量T)< 5 (P=0.05) なので、この差は”有意水準5%で有意な差”となります。
n(対の数) | P=0.05 |
6 | 0 |
7 | 2 |
8 | 3 |
9 | 5 |
10 | 8 |
11 | 10 |
12 | 13 |
13 | 17 |
14 | 21 |