医療情報学について
現代の医学はエビデンスに裏付けられた事実に基づき医療を行うEvidence Based Medicine (EBM, 根拠に基づく医療)が行われています。このエビデンスは、医療の現場で発生する様々な情報であり、これを集めてデータを整理し、診療にフィードバックさせることを目的に作られた医療分野の学問が医療情報学と考えられます。狭い範囲では病院で利用される電子カルテをはじめとする医療に関するデータベースと捉えることもできます。しかし、医療の現場では多くの情報が生まれて、デジタル化され、収集されて、再利用されています。特にデータを共有することは現在の医療の各分野の大きな課題となっています。大きなものはヒトゲノムのデータ共有もありますし、疾患情報や薬の情報なども含まれます。従って病院内などの狭い範囲で利用される医療情報と、インターネットで公開されている、あるいは学会のメンバーだけといった特定の人々にだけ限定して公開されているようなデータもあります。さらに総務省を中心に「医療等ID」の利用が検討されています。これは”マイナンバー”の医療版というものでこのIDを利用して多くのデータをリンクし、疾患の原因などを疫学的に探ることが可能になると考えられています。こうしたインターネットを利用して医療情報の公開や情報収集をしようという考えは、1996年に発生したO-157による感染拡大時に、症状や治療法がネットで公開されて多くの医療機関で利用されたことに端を発します。このように医療現場では情報の収集と公開が常に行われています。この基盤になる仕組みを学習するのが医療情報学だと考えています。またこれらの情報から何が原因かを特定するための数学的な手続きが医療統計になります。医療統計のよい例は
医療情報学をまとめている団体として医療情報学会、情報処理学会、医療画像情報学会などがあります。
また、今日本は高齢者社会を迎えようとしています。そして、厚生労働省は2025年までに地域包括ケアシステムを構築すべく取り組んでいます。こうした中で医療情報の共有は急務であり、地域医療のためには病院内外の高齢者の健康状態の情報共有が望まれます。またその範囲は高齢者のケアに携わる多くの医療関係者に広げられるようになると考えられます。こうした中でこれから医療に携わる人には是非医療情報についての多くの知識と理解が求められると考えます。これらの観点から、この講義では、データベースの理解、集めた情報の整理と比較のための統計手法を学習します。また、最近ではウェアラブルディバイスを利用した生体情報を収集するディバイスが話題になっています。これらのデータはビックデータをあつかるソフトなどで処理され将来健康管理に利用されると期待されています。ディバイスは大変小さなセンサーと通信機能を備えた電子回路で、スマートフォンなどと連携して生体データを集めます。
1. データベースの仕組みの理解
2. 医療情報の項目リストとその利用
3. 電子カルテの種類と病院での役割
4. 医療統計の考え方と簡単な統計手法の習得
5. 厚生労働省から出される統計資料とその見方
6. 携帯端末の健康管理への利用とその将来