杉山 敏宏 教授

研究について

──先生はどのような研究をされていますか?

 アルコール依存症の研究をしています。以前は薬物の依存症についても研究していました。当時、アルコール依存症の方は15Kmと30Kmを歩く行軍という治療法が盛んに行われている時代でした。そのようなころに、アルコール依存症の治療法に吉本伊信の内観療法を取り入れました。内観では自分を振り返り “してもらったこと” “して返したこと” “ご迷惑をおかけしたこと” を掘り起こすことにより、自分を見つめることをします。これが断酒の大きな第一歩につながることの研究をしてきました。

──それらの研究はどのような意味を持っているのでしょうか

 酒害で苦しんでいる人達の気持ちを代弁するような意味もあります。たとえば、断酒会のメンバーに大学に来ていただき、当事者の人に話をしていただき、学生にも酒害者の苦しみを分かってもらうようなこともしたことがあります。自分たちの研究が、酒害者達の苦しみを社会に向けて発信する。そのような意味も持っています。

社会貢献について

──どのような社会貢献をされていますか

 いまはしていないが、過去においてはアルコール依存症で苦しんでいる方の代弁者として、一般には理解しにくい内容を講演会活動で伝えたことが数回あります。

──どのような学会(研究会・グループ等)に所属されていますか

 主として日本精神保健看護学会などに入会して研究会などに参加し、学識を深めています。また、セミナーを開いたりすることもあります。

看護を志したきっかけについて

──先生が保健師・助産師・看護師を志したきっかけを教えてください

 元々は、薬品会社で働いていましたが、腰痛で長期入院することがありました。結局、その仕事は続けられなくなりましたが、私の性格を見抜いた師長さんの勧めで看護の道に入りました。

──なぜ本学を選んだのですか

 京都の文化にふれるために本学を選びました。

臨床について

──どのような臨床現場で働いた経験がありますか

 精神保健福祉センターや精神科の病院で32年間、働きました。

──印象に残っている事例があれば教えてください

 精神科の病院でバイトをしていた時代に、ある患者さんとの交流が忘れられないこととして残っています。すごく優しい方で、私に自分の望みを託したのですが、自殺をして亡くなられました。その方のことは何十年たっても思い出されます。

ズバリ看護の魅力って何でしょうか

 「教育とは川に字を書くごとき、流されても、流されても書くことである」この言葉は、精神看護の大家で有名な尊敬する先生のお言葉です。学生の悩みや葛藤、両親との意見の食い違いなどで相談に来ることも、看護の魅力ではないでしょうか。

注)このインタビューは平成27年度に行いました。