
山﨑 翼(やまざき たすく) 助教
鍼灸学部 保健・老年鍼灸学講座 プロフィール 教員紹介
研究について
──先生はどのような研究をされていますか?
鍼灸が心身の疲れ(疲労)に有効か?というテーマで研究しています。そして、美容鍼灸の有効性についても研究しています。
どちらも、鍼灸治療の有効性が少しずつ解明されてきており、やりがいを感じる研究テーマです。
──それらの研究はどのような意味を持っているのでしょうか
「疲労」は放っておくと心筋梗塞や高血圧など、さまざまな病気の原因や悪化要因になると考えられており、過労死にもつながるとされています。これを鍼灸で治療できる可能性があることは、医学的にも非常に重要なことです。
また、「美容鍼灸」は多くの鍼灸師が行っているものの、有効性を科学的に示す研究があまり進んでいません。美容鍼灸が有効であることを証明することは、鍼灸師や、美容鍼灸を受ける患者さんにとっても重要なことだと思っています。
──その成果はどのように社会に還元される(役立つ)のでしょうか
肉体労働、デスクワークを問わず、労働者が慢性的に疲労した状態で仕事をしていると仕事効率が悪くなり、年間で約1.2兆円もの経済損失が引き起こされると文部科学省疲労研究班が算出しました。すなわち、慢性的な疲労は医学的な観点のみならず、経済的損失という観点からも、大きな社会問題であることが明らかになっています。
この疲労に対して鍼灸治療が有効であることが明らかになれば、働く人がより元気に働けるようになり、社会に大きな影響を与える可能性が期待できます。さらには病気や過労死の予防にもつながることが期待されます。
また、「美容鍼灸」は薬やサプリメントなどと違い、副作用がなく安全な美容法です。より健康的に美しさを手に入れたい女性にとって、非常に魅力的な美容法になるのではないかと感じています。
社会貢献について
──どのような学会(研究会・グループ等)に所属されていますか
全日本鍼灸学会、日本東洋医学会、日本未病システム学会が主な所属学会です。病気の治療だけでなく、病気の予防や健康増進を目的とした鍼灸治療の活用について、積極的に発表しています。
──(役職がある場合)なんという役で、どのようなお仕事をされていますか
全日本鍼灸学会では学術部に所属しており、年に1回開催される学術大会の企画や運営を担当しています。
臨床について
──鍼灸臨床ではどのような方法をよく使いますか
痛い場所や筋肉が硬くなった場所への局所治療が多いですが、胃痛や下痢などのような内科的な症状に対しては、東洋医学的な考えに基づいた治療を行っています。
──どのような症状や病気を診ることが多いですか
やはり肩こりや腰痛、膝痛が多いですが、ばね指や顔面神経麻痺を見ることも多いです。それ以外にも、なんとなく体がだるいといった方や、胃腸の不調などを訴えてこられる方も少なくありません。
──鍼灸臨床のご専門があれば教えて下さい
研究テーマでもある疲労や、それに関連する睡眠障害などを専門としています。また、美容鍼灸を希望される患者さんに対しては、併せて顔への鍼なども行っています。
──印象に残っている症例があれば教えてください
筋委縮性側索硬化症(全身の筋肉がだんだんやせていく病気)の患者さんで、「毎日背中が痛く苦しい」とおっしゃっていた方がいました。痛み止めもほとんど効かないようでしたので、鍼灸をしても効果があるか心配でした。しかし、何回か続けて鍼灸治療をしていくと、「だんだんと背中の痛みがなくなってきた」と言われたんです。その時には、鍼灸の可能性と奥深さを感じました。
鍼灸を志したきっかけについて
──先生が鍼灸師を志したきっかけを教えてください
私自身が、平山病という非常に珍しい病気で苦しんでいた時、高校時代の恩師の先生から、鍼灸というものがあることを教えてもらいました。鍼灸は、体だけでなく心も癒すことができ、また子供も大人も治療することができると知り、そこに強い魅力を感じました。
──なぜ本学を選んだのですか
本学は、3年生で鍼灸師の資格をとった後に、4年生で附属病院を含めたさまざまな実習があります。卒業前に、本物の医療を現場で見て勉強できるということが魅力的で、本学に進学しました。
注)このインタビューは平成26年度に行いました。