
井上 基浩(いのうえ もとひろ) 准教授
鍼灸学部 臨床鍼灸学講座 プロフィール 教員紹介 夢ナビ
研究について
──先生はどのような研究をされていますか?
運動器系(整形外科領域)の疾患・症状に対する鍼灸治療の臨床研究・基礎研究を行っています。研究は幾つかのカテゴリーに分け、それぞれの研究を進めています。そのカテゴリーは、「既存の鍼灸治療法の検証」、「新たな鍼灸治療法の開発」、「新たな領域への応用:再生医学と鍼灸治療」、「バイオメカニクス的鍼治療:視点を変えた応用」、「予防医学と鍼灸治療」、「他の治療法との併用効果」です。
この中でも、特に力を入れているのは、「新たな鍼灸治療法の開発」、「新たな領域への応用」です。今回頂いた、日本温泉気候物理医学会研究奨励賞は、「新たな領域への応用:再生医学と鍼灸治療」に属する、末梢神経の再生促進に及ぼす直流鍼通電刺激の効果発現機序の解明に関する内容です。
──その他の受賞に関わる研究について教えてください
「新たな領域への鍼灸の応用」に関しては、再生医学分野において、末梢神経の再生促進・骨癒合・腱癒合の促進に及ぼす直流鍼通電刺激に関する内容で、それぞれいくつかの賞をいただいております。また、新たな治療法の開発に関しては、腰下肢症状に対する神経根鍼通電療法、陰部神経鍼通電療法、傍脊柱部刺鍼に関する基礎的・臨床的研究において、いくつかの賞をいただきました。
これらには、私自身の受賞はもちろんですが、指導大学院生の修士・博士論文も含まれます。私自身の受賞は研究者として非常に嬉しいことですが、指導院生の受賞は、研究者としてはもちろんのこと、教育者として指導冥利につきます。
──それらの研究はどのような意味を持っているのでしょうか
鍼灸臨床の中で、最も多く遭遇するのは運動器系の疾患・症状です。その意味で、運動器系疾患・症状に対する鍼灸治療に関する基礎的・臨床的研究は進めなければならない重要な分野と言えます。特に、我々が重点課題としている「新たな鍼灸治療法の開発」、「新たな領域への応用」は、従来の治療法では、効果のない場合に行う新たな鍼灸治療法の開発であり、鍼灸医学の発展にとって、非常に重要と考えています。
──その成果はどのように社会に還元される(役立つ)のでしょうか
「新たな鍼灸治療法の開発」、「新たな領域への応用」は、動物実験から始まり、有害事象の検証を含めた臨床試験へと進めて行きます。そして、結果が良好であり、患者さんにとって有益な治療と判断した場合に、実際の臨床で使用します。これまで、いくつかの新たな治療法を開発しており、未だ動物実験の段階のものもありますが、実際に臨床応用されている治療法も少なくありません。
社会貢献について
──どのような学会(研究会・グループ等)に所属されていますか
所属している学会は、全日本鍼灸学会、日本体力医学会、日本温泉気候物理医学会、日本生体電気物理刺激研究会、日本統合医療学会、日本末梢神経学会、日本ニューロモデュレーション学会等であり、毎年、各学会で新たな研究結果を発表しています。
──どのような活動をしていますか
昨年度まで、全日本鍼灸学会雑誌の編集委員をしていました。全日本鍼灸学会は、鍼灸師を主な会員とした日本で最も大きな学会で、学術雑誌を年5回刊行しおり、また、年1回の学術大会が行われています。学術雑誌の編集委員は、投稿された論文の査読者を決定し、査読結果と論文の内容から、雑誌への掲載を判断します。
臨床について
──鍼灸臨床ではどのような方法をよく使いますか
基本的には、現代医学的病態把握に基づく鍼灸治療を行っています。つまり、現代医学的に病態をとらえ、症状の緩解に影響する刺激ポイントを、現代医科学的に考察して治療を行います。
──どのような症状や病気を診ることが多いですか
運動器系(整形外科領域)の疾患・症状、特に脊椎疾患、末梢神経障害を診ることが多いです。
──鍼灸臨床のご専門があれば教えて下さい
運動器系(整形外科領域)の疾患・症状です。
──印象に残っている症例があれば教えてください
新たに開発した「陰部神経鍼通電療法」「X線透視下神経根鍼通電療法」「末梢神経の再生促進を目的とした直流鍼通電」を初めて臨床で使用し、効果を確認できた時が強く印象に残っています。
鍼灸を志したきっかけについて
──先生が鍼灸師を志したきっかけを教えてください
私は本学に入学する前は他大学の学生でした。小学校の高学年から始めた水泳をその大学でも続けていたのですが、高校から大学まで運動器の障害を多く経験しました。その時に鍼灸治療を初めて経験し、そのすばらしい効果を実体験したことがきっかけです。
──なぜ本学を選んだのですか
当時は、鍼灸医学を学ぶことができる大学は本学だけでした。もちろん専門学校はありましたが、大学では高度な鍼灸医学を学ぶことができると考え、迷わず本学を選択しました。
注)このインタビューは平成26年度に行いました。